「書ほど楽しいものはない」とは、石川九楊が常々口にする言葉ですが、展覧会場で作品の前に長時間立って、じっと見入る人の多いことには定評があります。入念に書きこまれた作品から浮かび上がってくるさまざまなシーンを楽しんでおられるのでしょう。
今般、石川九楊は、2000年以降に制作された話題作の中から10点を選び、1作品中の1場面に焦点を合わせて切り取り、「版画」ならぬ「版書」(細密レプリカ印刷)10点を仕上げました。名付けて「DETAILS(細部)」。
完成作の中に隠れていた、原作とは一味違った「DETAILS」の世界が出現しました。
「版書(A2変型版)」を一点目近において、一献のおいしいお酒でもいかがでしょうか。
作品を書いていると、「次はここへ」と紙面が囁いてきます。むろん沈黙が流れ、筆が止まることもしばしばですが。
紙面に広がる景色は、一画、一筆、刻一刻と姿を変えていきます。作者は次々と展開するそのスリリングな
美は細部に宿る――作品の中のそのような「ある瞬間」を甦えらせる手段はないかと思案し、「版書」の制作を企てました。従来のようなエッチングやリトグラフでは、左右を反転した原板をつくる必要があり、一点一画の力と
そこで、二〇〇〇年以降の作から一点につき一つの「ある瞬間」を抽出し、細密な撮影と入念な製版、現在では得がたいレプリカ印刷によって「版書」作品一〇点を制作しました。
製版と印刷を幾度も繰り返し、原作から独立した十分満足のいく作品に仕上がりましたので、ふさわしい題名をつけ上梓することにしました。ここにご案内いたします。
石川九楊
制作:石川九楊
撮影:高橋亨
製版:高橋亨
印刷:土屋一夫(山田校正)
(画像の作品は『落日』です)
・作品サイズ:544mm×392mm
・額装サイズ:643mm×468mm
・額は、表面銀色・側面黒色の木縁特製額。
・作品の周囲は紙マット(アイボリー、金色筋回し)。
作品には作者自押印と、限定20部の肉筆番号入り(鉛筆)。
署名入り(鉛筆)。
背面には「DETAILS」シール貼付。
肉筆による題名入り(毛筆)。
封印:作者自押印。
作品をつつむ黄布包
差函入。
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